SFCスピリッツ
患者の環境を整える
葛城 建史さん
慶應義塾大学病院 看護師
東邦大学大学院医学研究科看護学専攻 修士課程在学中
2005年看護医療学部卒業
看護医療学部では、看護について考えるとともに、医療制度や政策など幅広く学ぶことができました。看護論の授業では、ナイチンゲールがクリミア戦争中、戦地の病院での高い死亡率を目の当たりにし、衛生環境を改善し、死亡率を下げたことや、看護の焦点は、患者のために自然の力が働きやすいような環境を提供することにあるという彼女の考えに感銘を受けました。米国ミネソタ州にあるメイヨークリニックでの実習では、看護の専門性の高いケアの提供が患者のニーズの充足や満足につながっているのを目にし、日本の医療について考えさせられました。また、看護政策の授業やゼミでは、専門職の立場から政策への提言を行い、患者本位の質の高い医療の実現に貢献することの重要性を学びました。
卒業後、看護師として外科系病棟から集中治療室と、実際に臨床を経験してみて、健康を回復するための治療に専念できるように患者を取り巻く環境を整えることで、患者を援助するのが看護であると考えています。患者を取り巻く環境とは、物理・精神・社会的なもの全てであり、人間の身体・心理に影響を与えるものです。治療における合併症を起こさないように感染対策や理学療法などを行い患者自身の身体環境を整えること、患者の体力を消耗しないようベッド周囲の物理的環境だけでなく、その人の生活背景なども含めた精神的・社会的側面まで理解し、環境を整えることが必要なのです。
現在、私は、感染症看護専門看護師になるため、病院の感染制御センターで勤務しながら大学院で学んでいます。感染制御センターでは、感染症や疫学などの知識に基づき、病院における個人や集団の感染予防と発生時の適切な対策を実施するなどの業務を行っており、大学院でそれらを実践できるよう学んでいます。ナイチンゲールは、近代的な看護理論と病院の衛生管理の指導・普及に多大な貢献をしましたが、当時の理論は、現在でも医療施設における感染制御の基礎となっているのです。
実際、仕事と学業の両立は大変ですが、SFCで出会った、様々なジャンルで活躍している同期からの刺激や今でも温かく声をかけて下さる先生方の応援もあり、頑張っております。将来、専門看護師として、看護がどれだけ医療の質の向上に貢献しているかを分析し、政策的な取り組みに結びつけ、看護・医療の質向上に貢献していきたいと思っています。
(掲載日:2011/11/15)