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2020.06.09

「孤独のグルメ」|看護医療学部長 武田 祐子

標題のメッセージが写真付きで送られてきた。鮮やかな緑色の空豆が写っていて、発信元は夫である。

89歳の母は、昨年8月に転んで恥骨骨折し、リハビリのために入院した病院で更に2度転倒。3か月のリハビリ予定を大幅に超過した240日間余の入院生活を送っていたが、ようやく6月1日に退院した。
退院とはいえ、これまでの生活は無理なので、介護サービスを利用して姉との同居生活を始めることになった。最初の1週間は生活状況を確認するために私も同居している。

新型コロナ感染症の影響で、2月の末から病院では面会禁止、ZOOMでの面談が4月から導入されたものの久々の再会である。髪はヘアカラーが抜け、伸び切ったスタイルは妖婆のようであり、私がヘアカット、姉がヘアカラーをして見た目は入院前に近づき、少なくとも10歳は若返った姿を鏡で見て笑顔になる。
長期の入院は筋力だけなく、認知機能をも低下させ、肺の基礎疾患を持つ母は在宅酸素療法もしていて、安全、見守りはそれなりの神経と体力を必要とする。私が仕事をしている日中は姉が、夜間は私が同室で添寝するという24時間体制である。退院し、娘に囲まれての生活を喜ぶ母の姿に救われる。
やはり課題は排泄と転倒予防である。特に夜間はポータブルトイレ、見守りセンサー、オムツをフル活用し、安全、安心、安楽の確保(看護の基本です・・)に努めている。

図1.jpgのサムネイル画像と、標題の夫のメールは、1週間の一人暮らしに「いかがですか?」と連絡したところ戻ってきたものである。家族で支え合うためには、家族の協力が不可欠であり、孤独のグルメ生活をそれなりに楽しんでくれていることに感謝。私の気持ちも軽くなる。

新型コロナ感染症の影響で、様々な日常生活の変化を余儀なくされている方も多くいると思われるが、できることを精一杯やってみる。それを周囲も温かに見守り、時にはユーモアを交えた交流ができれば、乗り越えた先にはきっと、新しい生活様式と共に心強い関係性も築かれていくのではないだろうか。

武田 祐子 看護医療学部長/教授 教員プロフィール