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2024.07.23

SFCの生き物たち|環境情報学部長 一ノ瀬 友博

湘南藤沢キャンパス(SFC)は藤沢市の北部に位置し、隣接する遠藤笹窪谷は藤沢市で最も良好な自然環境が残されている地域とも言われている。SFCは1990年に開設されたが、2001年には遠藤笹窪谷の南に看護医療学部が新設された。その際に敷地の北端にビオトープが設置された。私は2008年に環境情報学部に着任したので当時の詳細な経緯は承知していないが、着任数年後から研究会活動の一環としてそのビオトープの生物相調査と維持管理を行ってきた。研究会の中では、看護ビオトーププロジェクトと名称が付けられた。その後、調査対象範囲をSFC全体に広げたので、2023年度からSatoFCプロジェクトと名称を変更した。SFCと里山を掛け合わせた名称である。

調査の対象としているのは、植物、魚類、甲殻類、昆虫類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類である。調査箇所と方法が限られているためSFCの全ての生物を網羅的に調べられているわけではないが、2023年度には合計474種を確認している。生物調査は基本的に春から秋が中心となる。鳥類については渡り鳥が日本に越冬しに来る冬にも調査を行う。つまり、研究会としては春学期から秋学期が始まるころまでが最も忙しい時期になる。今週の火曜日(2024年7月16日)が研究会の最終回であったが、それぞれの分類群のこれまでの調査結果が報告された。例えば、鳥類については、総合政策学部・環境情報学部を中心とした範囲(以下総環エリア)で36種、看護医療学部(以下看護エリア)と遠藤笹窪谷公園周辺を含んだ範囲で31種を記録した。調査時間以外の観察も含むと総環エリアで43種、看護エリアと遠藤笹窪谷公園の範囲で36種に上る。これは繁殖期のみの数であるので、藤沢市内でも特筆すべき鳥類の豊かさと言えるだろう。

鳥類ではオオタカはほぼ毎年SFCの内外で観察することができる。藤沢市の鳥に指定されているカワセミは鴨池で度々記録されている。種の保護のために個別の種名をここでは上げないが、様々な絶滅危惧種がSFC内で記録されている。また藤沢市内で初めての記録となった種が記録されたこともある。今年ではないが、看護エリアに設置している自動撮影カメラにホンドギツネが撮影され、藤沢市では数十年ぶりの記録となった。外来種も確認されていて、アライグマは家族と思われる数個体が度々いっしょに撮影されている。

SFCの生き物たちについて広く知ってもらうために、これまでの成果を踏まえ図鑑の作成を進めている。まず、SFCで普通に見られる生物を紹介する予定である。今年の万学博覧会に向けて学生たちが鋭意作成中なので、是非楽しみにしていただきたい。


一ノ瀬 友博 環境情報学部長/教授 教員プロフィール